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キミとボクの『WORLD WIDE DEMPA』

  • Posted by: MMMatsumoto
  • 2013年12月15日 12:14
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キミとボクの『WORLD WIDE DEMPA』

text/MMMatsumoto

 でんぱ組.inc 2年振りの2ndアルバム『WORLD WIDE DEMPA』が到着! 遂に、遂に、到着! でんぱ組.incの1曲1曲は密度が高く、1作にまつわる活動も活発。充実度2060%ゆえに、少しアルバムの必要性を忘れていた嫌いもある。第一、彼女達の代表曲の一つになった"W.W.D"など、本来アルバム後半、エンディング前に収録される大曲並みの質量なはず。でもでんぱ組.incは、出し惜しみもなくシングルにしてしまうのだから。また、たった1週間で、リリース、海外ライヴ、コラボ等が詰まるなど、アイドルの活動密度はミュージシャンの10倍増しな中でも、特にでんぱ組.incは激しく、小誌別冊『でんぱブック』を発行後も、隔週ペースで、シンガポール、インド、ジャカルタ等、海外公演だけでも立て続けだった。全てを把握できるのは超絶コアファン・レベル、というでんぱスケジュールの現状でもある。特にこの1年間、"W.W.D"の成功以降、各自ソロでの活動も増え、もはやカオス。でんぱ組.incは"かわいい"ことをカオスにしてしまった唯一希有な存在だ。もはやアイドルファンの許容範囲を大きく越えて、「なぜ、でんぱ組.incは売れたのか」とのツイ発言も出る程に消息不明。それは彼女達の衣装やアートワーク、写真の撮られ方一つから"ビビッ"と電波したクリエイターやファッション関係の人達にしても、"きゃわっ"とファンになった同世代の女の子達にしても同じ。理由がつかめないでいる。なぜなら策略では為し得なかった、不規則で、理にそぐわない事の連続だから。方程式が当てはまらない。それは"新しい"ということ、そのもの。レーベルも運営も、もちろんでんぱ組.inc本人達も、誰も予想が出来なかったハプニング(笑)が連続してブランディングされているのが、でんぱ組.incだ。ゆえに、更新も早いせいで受けて側も追いつかず(笑)、その不規則性ゆえに五里霧中。彼女達の特殊な位置付けを、誰も説明できないでいるのは、もはや不自然なことではない(笑)。

 この最高のステイタスで、でんぱ組.incはアルバムをリリース出来た。幸運な、とても運の強い子達だ。延長された思春期ゆえの思いの強さというのは潜在的なのか、耐久性が高いということなのだろう。ちょっとやそっとじゃ諦めないから。と言う前に、一度は諦めかけた人生だから、失敗することが怖くない(笑)。「どうせまた元に戻るだけ」、それどころか時々「戻るほうが楽かも」程度。実は一人で居るのが今も楽なので、ライヴ後の打ち上げ経験もゼロ。野音が1分で完売しようが終われば一人で帰って食事という人達だから、世で言う"さみしい"に代表されるマイナスには相当強い(笑)。そろそろリスナー読者の方々もお気付きのように、思春期・青春期の女の子が必ず言う「さみしい」という言葉を、彼女達でんぱ組.incから聞いたことがほとんど無いはず。彼女達にとってひとりぼっちは、基本がNOTぼっち春夏秋冬なのだ。こんな激スケジュールとなった今となってその時間帯は、ますますゲームにアニメにいそしむ大切な時間でもあるはずだから。つまり、燃え尽き症候群には縁が無い。

 新曲は4曲。+"Future Diver"の6人ヴァージョン。最初に感じたのは、「どんだけ"W.W.D"症候群なんだ」ということ。まず、J-POP百戦錬磨のミュージシャン作曲家である蔦谷好位置氏の器用さが存分に発揮された"VANDALISM"。これは鮮やかだった。もはやでんぱ組.incの解析・研究成果である。密集する詰め込み加減までが解析されていて驚く。"イツカ、ハルカカナタ"にしても、そのまま"W.W.D"を受けての感情表現だ。いかに"W.W.D"シリーズの衝撃が強かったか、「でんぱ組.incと言えば...」という命題を突き付けられ苦闘せざるを得ないまでに、後続に大きく影響を与えてしまっている。やはり、アイドルが"W.W.D"流に吐露することは斬新なのだ。もっと言えば、アイドルというものの貴さは、「今すぐ会えるアイドル」時代の今も失われていない。ここまで来れば、もはやアイドルというものへの憧れは、2010年代現代の集合無意識、そのポップヴァージョンと言っていいかもしれない。そして、通称インド曲"なんてったってシャングリラ"に関しては、個別インタビューで古川未鈴が「アイドルにはこういうインドっぽい曲が必要なんですよ」と笑顔だったが、僕は内心、「それ以前にあなた達は昔から祭りですよ」と返したのは、ここだけのお話。「"Future Diver"のドッヒャーっと溢れ出す熱量の出方からして既に。そして"ノットボッチ...夏"イントロの卑弥呼・弥生農耕文化のたおやかなリズムと踊りを見た時も、いつもあなた達には、江戸文化を継承したかのような、日本のサイケ感を覚えてますから」と。唯一EDMをでんぱ解釈した"ナゾカラ"がストレートに感じるものの、EDM特有のグニョっと押し出す感触に乗って、歌い出しメロディーの敢えての不安定感がとっても癖になる。

 これら新曲とは別に課外授業?として、BiSの"IDOL"をカバー音源化し、そのあんまりにでんぱなアレンジに、"でんぱれ"玉屋2060%のゆる鋭さを再認識したけれど、ステージで踊ったら、これがまた輪を掛けてヤバイ! でんぱ組.incのダンスは、ダンスの在り方を問うたところから出発しているだけに、発想豊か、ゆえにカルチャー度が高いことでも有名。毎回毎回が楽しみだけれども、"IDOL"ではなんとスローモーションを踊っていた(笑)。あの発想力を持ってして、クリエイター達が刺激を受けるのは当然だ。しかもこの半年で、でんぱ組.inc本人達も、既存曲を含めダンスの精度を上げ、切れも断然鋭くなっている。

 ステージで言えば、もうひとつ。アイドル現場は、観客を含め"ステージ"であること。これは以前からお伝えするとおり。そこででんぱ組.incの場合は、でんぱ伝来のコアファン達が、でんぱメンバー6人に拮抗するレベルでお祭りなことだ。バンドじゃないもん!との2マン(2013.11.28 @東京・キネマ倶楽部)では、170本近くの緑のサイリウムを半透明のコート内に装着したピンク・フロイド級"電飾男"が、"Future Diver"中に出現(爆笑!)。なんと頭の位置まで押し上げられて、頭上に立ってヲタ芸を打つという快挙?を達成。その瞬間はステージ上で沸くでんぱ組.incを凌駕して注目を浴びるという、まさにでんぱ組.incが、ヲタ芸真っ直中をくぐってきたかつてのディアステージ時代を思い出させるものがあった。今も、でんぱ現場はアイドル界にあって、数少ないこの自由が許されている。統括プロデューサーである福嶋麻衣子氏(もふくちゃん)を筆頭に、運営サイドが"祭り"気質だから。これを理解し継承するコアファン達が、今も周囲に迷惑が掛かり過ぎないよう配慮しながら、存分に楽しむ。遊びのルールを知っているからこそ。そしてこれを培ってきたことが何より誇るべき事であり、アクトに関係する全ての人達が注目すべき事。でんぱ組.incの楽しさは、楽曲や衣装等ばかりではなく、彼女達が発信するものに共感し、送り手/受け手の垣根を越えて楽しむというところにある。でんぱ組.incの神髄とは、つまりこの姿勢のことである。ここから全てが出発する。

 時折、"W.W.D"シリーズに関連した物語性への批判が出るけれど、でんぱ組.incはいつも常に昔から、何一つ嘘無く、ありのままの自分達を示し語ってきただけ。何の誇張も無い。むしろ、引きこもり体質の謙虚さゆえに、周囲が無理に引っ張り出したに近い。だから見当違いもはなはだしい。事実を語っただけ。ろくに現場にも来なくて推測半分で見誤っている(お前らの)机上のちっぽけな理屈とはワケが違う事実を。そうして彼女達のような人達のこれまでの人生を否定するという、そういう人間性がSNS時代だからこその人類根幹の悪であることを再認識するばかり。"W.W.D"シリーズは、リスナーにとっても踏み絵もしくはリトマス試験紙だ。というのも、今そして今後でんぱ組.incは、アイドルも音楽も衣装も容姿も越えて、生き方のレベルでも語られるアイドルになっていく可能性が大きいから。アルバムというのは音楽層や一般層にも向けられたものだ。でんぱ組.incは、やる事の中身を充実させることで、性別年齢を越えた共感を得ていく時期に差し掛かっているはずだから、ぜひこのアルバム『WORLD WIDE DEMPA』こそ、その役割・きっかけを果たしてほしいと思う。


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