- 2015年2月11日 12:35
でんぱ組.incの夢眠ねむさんの連載「まろやかな狂気」の続きです。
前号のリニューアルから、トークの最初3000~4000字を誌面に、
その続きを、こちらマーキーのブログに掲載する形を取っています。
ねむちゃんの話は、どこも面白いから。
彼女の鋭くもほんわりした話を、
アイドルにおける教材として記録していこうという主旨のもと、
毎回ねむちゃんがテーマ設定し、こういう形になりました。
ので、毎回12000~13000字あります。
リニューアル2回目のテーマは、「名前」。
ファンは「夢眠ねむ」「名前」と来れば「襲名」と来るわけですが、
今回は更にその奥を話します。
ではでは。
と出てきたものに別に意味は無いから。やっぱり後付けの話しか出来ないし、やっぱり生まれたときから"夢眠ねむ"でいる印象を付けたい。私は例えば、なんでそんな年齢とか本名とか知りたいんだろう?っていう側なんですよ。そのファンタジーをファンタジーとして受け取る人達と夢を見たいみたいなところのハードルとして"夢眠ねむ"っていう名前があって。そこで本名が気になっちゃう人は他所の人だと思うから。たぶん身体に馴染んでたりとか、その歯切れの良さを自分で体感してる子とセンスが近いんだろうなって思うから、名前を訊いて、とっつかない人達とは合わないかな(笑)」
――そうだろうね。
「あとピンキーも"ピンキー!"だし。でも"藤咲彩音"じゃないですか。ああいうのいいなあって思っちゃう。たぶんピンキーの中でもちょっとした使い分けはあると思うですよ。やっぱりニコ動で踊ってた時の、例えば"彩音"じゃない時の人格が"ピンキー!"だったわけだから。たぶん"ピンキー!"だと表現出来るけど、"彩音"だと戸惑った瞬間もあると思う。私、今中の人の本名で何かやれって言われたら、恥ずかしくってたぶん出来ないなって思うから。衣装について訊かれる時に、その衣装を着て舞台に出ると戦闘服みたいな気持ちになるっていうのがあるけど、もう"夢眠ねむ"としてしか最近は存在してないから。例えば中の人のことを思って悲しんだりとかしてた時期が長かったけど、『かわいそうだな』『隅に追いやられてるな』とか、なんかもうやっぱり今更"夢眠ねむ"じゃないほうでは生きられないなっていう、そういうスイッチングがやっぱり名前にもあるのかも。だから"夢眠ねむ"を襲名するって言った時に、一番悩んだのが"夢眠ねむ"って名前を取られちゃったら何て名乗るんだろう?ってこと。"元祖"とか"家元"とか? やっぱりねむちゃんって呼ばれたら振り向いちゃうだろうなって思うから」
――ちっょと考えどこかも。
「芸歴イコール"夢眠ねむ"歴みたいなことになってくるけど、それに関して最近すごい考えてるんです。将来もしも子供ができたら、それこそ中の名前の人が付けるのか、ねむちゃん側で付けるのかとか。例えば信長とかだったら"信成"とかになってたりするじゃないですか。そういうのとかどうなってくんだろうとかって(笑)」
――どうするの?
「どうしよう! 男なら相手の名前を継ぐとして。女だったら自分の名前を継いでもいいなと思ってるんですけど。でも"ねむ"に似てる名前って、ちょっとやっぱりキラキラネームになっちゃいそうだし、普通に(笑)」
――(笑)。命名する時にすごく考えそうだね。
「考える。もうゲームの最初にキャラクターの名前を入力するのもめちゃくちゃ考えるのに、ペットとか子供とか。本当に自分の芸名じゃないところでの名前の影響とか。自分が名前で得したり損したり経験してるから。例えば由芙ちゃんの『#ゆーふらいと』っていう曲のタイトルを付けた時も、直感で決めたんですけど、やっぱりデビュー曲の語感って大事じゃないですか。そういう自分以外のところのネーミングの影響もすごい考えるようになってて。LinQちゃんのPVを撮った時も、メンバーがいっぱいて名前が分からないと思ったから、ゼッケンを付けて名前を見れるようにしたりとか。なんかずーっと名前に執着されてて」
――そうだね。なぜなんだろうね。
「私元々デザイナーを目指してたんだけど、たぶん自分が憧れてるものがファインアートなんかのアーティストなんですよ。デザインは改良だけど、アートは発明だ、すごい格好いいと思って。改良した人は名前を付けちゃダメなんですよ。でも発明した人だけ名前をつけることが出来るんですよね。星も第一発見者しか名前を付けちゃいけないとか。特許もそう。一個取っちゃうともう他の人が取れないドメインとかアカウントも。だからやっぱり先に面白いことを発明したいし、それを自分の物にしたい。それのたぶんでっかい印が名前を付けるってことだから」
――支配欲みたいなこと?
「かもしれない。でもたぶんその、発明できたっていう優越感の形」
――神になりたい系? 神感、神性ですよね、ゼロから1にすることだから。
「うん、ですね! でも神にはでもなりたくない。だから名前を付けるのがすごい怖いし。でも自分の周りの手の内の発明だったりしたら、堂々とそこは名乗れるし。やっぱ自分の考えをコンパクトに落としこめる。そこはデザイン脳かもしれないけど。コンセプトを10文字以内位に纏められるっていうのが、私はオシャレだし格好良いと思ってるから、名前っていうのはすごいって、ずーっと気にしてる」
――究極を言えば、自分の意識の拡張なのかなって気もするんですけどね。遺伝子としては自分が滅んでしまうのは分かってるわけですよ。だからそれを子供に託していく。後世に自分を延長していって欲しいという表れだと思うんですよ。それが種の保存の根本理念だとして、名前は標識だから、大きなものなわけですよ。だからみんな自分の名前の一部を子供に付けたりしがちだっていうのも、その気持ちの表れなんだろうね。
「それはあると思う。例えば歴史を見ると、やっぱりみんな血についてめちゃくちゃ執着があって戦ってるじゃないですか。誰が支配するかとかの。あと名乗る。あれが格好良いと思ってて。戦う時に『私はどこどこの誰々だ』って。歌舞伎でもそうなんですけど、白波五人男ってのがあって。ねずみ小僧みたいなのとか、犯罪をしてる5人が旅をしてて最後とうと捕まるって時に、自分の名前がこう書いてある傘をくるっと回して、『生まれはどこどこ、育ちはなんとか』って生い立ちを喋って(笑)、『人呼んで!』と言うわけですよ(笑)。それが涙が出るくらい格好良くって! 5人のでんぱ組が終わる時にやりたかった事が、それだったんですよ。みんなに生い立ちを話させて、みりんちゃんなら『人呼んでみりん』とか、『えいたそこと成瀬瑛美だ』『郡山で育ち~』みたいな(笑)。『歌って踊れるアイドル~』みたいな座右の銘みたいなのをわざわざ言って名乗るってアキバ的でもあるし。歌舞伎? 昔の江戸的でもあるし、あと一個はヤンキー的でもあるっていうのが、名前に執着してる3点が、私はヤンキーではなかったんですけど何かヤンキーもずっと格好良いと思ってて。あれも派閥で名前じゃないですか。『西校の狼~』とか付いてるわけですよ。そういうのいいな!みたいな。自分で言ってる名前プラス誰かがそう呼んでる、『人呼んで』みたいなのが格好良いんですよ。私は『人呼んで』がまだ無くて。『人呼んで』が欲しい(笑)」
――確かにヤンキーとヤクザと江戸時代はメンタルで全部同じかも。
「アキバでハンドルネームだけで生きていける感じもやっぱりそうだから。自分が決めた名前だったり、人にそう呼ばれ始めたからそういう名前にしたんだから。やっぱりそこで本人のアイデンティティも作られて、もうひとつの人格として生きていけるし、人呼んでの世界でそう思われるってことは、イメージがもうその形になって名前としてまで呼ばれてるだとか。色んな意識が交差してるのが面白いなって思う」
――その抽象概念が名前やその人になってるっていうのがすごいよね。でんぱも似たことをやってると思うんだよ。概念が継がれるっていう。
「メインのコンセプトはそのままに加筆されていったりとか」
――それって、永久っていうものに対しての憧れの気がしますね。
「ああ、かもしれない。それで、『名前』も『人呼んで』もそうなんだけど、最近その名前で面白いと思ったのが、アプリとかでゲームをしているとキャラクターが出てくるわけですよ。しかも、育てていくと進化させられるんですよ。名前も変わるんです! それって一個可能性として面白い。確かに武将とかも頑張ってたりすると名前が変わったりするじゃないですか」
――相撲力士とかも。
「ね。出世魚みたいになってもいいんじゃないかって(笑)。となると、じゃあ何て呼ばれるんだ?ってなるけど」
――戒名とか?
「進化の最終形態ですよね。私、いちばん気になるのが自分の戒名。たぶん私は中の人の名前での戒名になると思うけど、"夢"と"眠"はもしかしたらどこかに入れ込んで貰えるのかもと期待します。理解あるお寺の方に頼めば。やっぱり戒名がキャッチーじゃないと、次生きていけないから頼むぞって思うんですけど(笑)。だって、戒名後に仲良くなった人は、例えばその戒名の一文字目を呼ぶかもしれないじゃないですか。"夢眠ねむ"じゃなくて"空"とか付いてたら『空ちゃん』とか呼ばれちゃうかもしれないし。すごい気になる。どう呼ばれていくんだろ?」
――ねむちゃんは生きてる間に改名を考えたことは?
「えっと、"夢眠ねむ"に関してはない。中の人の改名も考えないなあ。結構気に入ってはいるんですよ」
――名前を付ける作業は、その人を占うことに近いことだというか、何か、道先を付ける作業な気がしますよね。
「そういう気がしますね。本当にあだ名も含めて名前のお陰で生きてたりもするし。"ねむきゅん"だって自分で付けたわけじゃないし。ディアステージ以前のメイド時代は最初"ねむねむ"って呼ばれてましたから」
――人が付けたもので名乗ってるわけだ。正直言って、例えば取材する時に名前みて分かるよね。
「お?」
――極端に言うとバンド名・グループ名を見ただけで、「このグループはやらなくていいな」って最近は分かります。
「え!! アハハ!」
――もう、センスがすごく出てるから。
「ありますよね。やっぱり私はネーミングセンスの時点で好きか嫌いかってあるなって思う。変な話、品があるかないかも分かっちゃうんですよね」
――そういう名付けをするということは、こういう服を着てるだろうなとか、なんとなく自分の今までの統計値を込みで嗅ぎ分けられるというか。
「本当に分かる! これはあの、自分を良く言うわけじゃないけど、"夢眠ねむ"って本当に上手く出来ていて。意外と安直じゃないという。でもパッと見は安直じゃないですか。夢で眠いでねむるって。でも解していくとそうなってなくて。ひとつも字がかぶってなかったり、意味を解せたりとか」
――名前っていろんな意味で象徴だね。
「うん。アイコンとしてやって行くんだ、アイドルとしてというところで考えても、やっぱり名前の感じは大事だなってつくづく思います」
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