- 2015年4月10日 19:23
60年代フレンチポップスの代表格にして現役シンガー、シルヴィ・バルタン。
アイドルを語る上で、源流がこの人になる。
というのも、日本で"アイドル"が始まったのが1970年。
まず天地真理、南沙織、麻丘めぐみ、アグネス・チャンらが次々とデビュー。
そして1972年頃、山口百恵や桜田淳子、森昌子らが出て本格化し、
第一期アイドル全盛期を迎える。
アイドルは高度経済成長期エンタメ界の象徴、
そもそもが一際華やかな存在としてある。
そのサンプルとなったのがフレンチポップス。
日本におけるアイドルの原形はそこにあり、
具体的にはシルヴィ・バルタンのことだった。
1964年彼女の初期代表曲であり同タイトルの映画『アイドルを探せ』が当時日本でも公開。
その後来日ツアーも行い、
ブロンドヘアにミニスカート、
ガーリー/キュートだけどボーイッシュでもある雰囲気で国民的人気を得ることに。
ウルトラマン全盛期に円谷プロが考案したバルタン星人が、
シルヴィ・バルタンに由来しているのは結構有名な話でもある。
パンチがあってエモーショナルさも秘める歌声が特徴で、
この当時60年代から70年代前半にかけては
オーケストラやホーンセクションと絡む曲調が定番だったこともあり、
実年齢よりも大人っぽく感じられる、
ということも当時から国内アイドルに移植された気配すらある。
多分にソフトロック的なニュアンスを含むのは、
当時のゆるやかな空気感の影響か。
大阪万博が開催され新幹線が開通し人類が月に行った当時の、
日本全体が"明るい未来"を信じて疑わなかった頃の陽気さ。
そして時を経ること45年、2015年の乃木坂46。
乃木坂46は今年に入って一気に攻勢がかかっている。
今一番急進的で斬新なのは、間違いなく乃木坂だ。
ファッション誌「Ray」「CUTiE」「nonno」「CanCam」の専属モデルに計5名も起用され、
2/22の7時間半にも及んだ西武ドーム公演の成功(ロックバンドやインディーアイドルじゃないんですよ!)、
11thシングル「命は美しい」の週間セールス50万枚越えなど、
どれも破格の規模内容だが、
規模の事以上に、そうしてアイドル概念を中身内容から変えつつあること、
その結果次期アイドル像を作り上げつつあることが何よりも急進的。
デビューから3年半。
こうして今になって乃木坂46の説得力が増しているにはワケがある。
一つにはギャップからの魅力。そして中身重視の様々作品の積み重ね。
乃木坂46はアイドル/ガールズグループ界において一番の美少女揃いと定評ながら、
実は中身本人達が一向にアイドル気質でない。
このギャップが作用しているには前提として各作品クオリティの高さがある。
けれど、その内容を冷静に見てみても、
50万枚級セールスの表題曲の9割がサビを強調しないマイナースケールの曲調で、
MVも7割がほぼ短編映画、時には30分に及ぶ。
そうして創作面ではクリエイター達の実験の場・発掘の場としても機能している程だが、
これは元を正せば本人達のキャラクターに由来している。
乃木坂のほとんどのメンバーが
アイドル観点からすれば思索型タイプなのだ。
定評ある清楚イメージも、この辺りから由来している。
そんな渦中に、現センターの西野七瀬初のソロ曲「ひとりよがり」が、1stアルバム『透明な色』に収録・披露されたのだが、
これが完璧にヤバイ。
シルヴィ・バルタンに由来する70年代初頭のアイドルイメージが、
特に曲に投影されていて、
まるで元祖と最前線が直結しているかのようで。
西野七瀬の持つはかないイメージは、もう絶大な人気なわけだけれども、
あのイメージこそ最初期アイドル達のそれに繋がる。
そうしてエッセンスを抽出するかのように用意されただろう「ひとりよがり」、
そして今回11thシングルに収録され、想いの入った斬新なMVでも話題を呼んだ続くソロ曲「ごめんね、ずっと・・・」、
ともに彼女の慎ましやかで人懐っこく甘い歌声が全開する。
震えるような息遣いの、いい意味での未完成さは、
まるで"アイドル"の原点かのよう。
今はもうアイドル達さえ失いつつある"純粋"のイメージを想起させるのだ。
この演出は、まさに素材・特性あって可能なこと。
西野七瀬という人は、マカオタワーからのバンジージャンプでもわかるとおり、
根底には強いものを秘めた人だとは思う。
第一級の競争世界だけに、
擦り切れがちになりそうなその特性を宿したままここまで来れたこと。
ここにこそ乃木坂46というプロジェクトの神髄がある気がする。
それで、「ひとりよがり」が初ライヴ披露された時が決定的だった。
TV番組「乃木坂46 SHOW」でのこと(YouTubeに映像アリ)。
白の広い部屋に椅子が一つ、そこに純白のワンピース姿。
そのものバルタンや同時期フレンチポップスのフランソワーズ・アルディらの60年代TVショー風だった。
それはプロデュースサイドの意図を感じさせた。
乃木坂初期3作までに溢れているフレンチポップス色(それに強く影響を受けている90年代渋谷系サウンドも含めて)、その代表曲「おいでシャンプー」イントロや間奏で、
シルヴィ・バルタンの「アイドルを探せ」の有名フレーズが引用されていたのも、
決して偶然ではなかったはず。
乃木坂46は、西野ソロ曲に象徴されるように、
大きなスケールでアイドル自体をオマージュ・リスペクトしつつ捉え直し、
次の時代へと更新しようとしている気がしてならない。
あいまいな逃げ言葉としての"ガールズグループ"ではなく、
新しい概念としてのガールズグループ、
活動の幅広さを考えれば、むしろ総合ガーリーカルチャーを目指しているはず。
その傾向が今年に入ってより一層鮮明になってきた。
MMM Radio Psychedelic
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