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2016年8月 Archive

MARQUEE(マーキー)Vol.116 夢眠ねむ(でんぱ組.inc)連載「まろやかな狂気」Notes.011「やり直し」続き

  • Posted by: MMMatsumoto
  • 2016年8月11日 19:37
  • MMM
P57.jpg

さてさて、毎回恒例の夢眠ねむ(でんぱ組.inc)さんの連載、
「まろやかな狂気」の続きです。
小誌最新号Vol.116 P57からの。

最後が「すっご」で切れていて誤植?と思ったあなた、
あなたは正しい! 誤植です(笑)。
正しくは「すっごい申し訳なくて。」

今回は、ここから始まります。
テーマは「やり直し」。
ところが後半、最近のアイドル話に展開。

ではでは、本誌P57からの続きをお楽しみください。




い申し訳なくて。そのトラウマも多分あるんですよ」

――少し加算されてそうですね。

「私、両親がすごい好きだから。すごいモヤモヤしてたんですよ」

――でも今やり直して、そういうのも全部清算できるわけじゃない?

「そうそうそう」

――今出来ちゃうそういう自分というのも嬉しいと思うんですよね。

「例えば何十年生きてきて、
その時間で出来るようになった事が、
他の事にもちゃんと効くのは嬉しいなと思って。
だからやらせてもらってた事に、
今は出来るようになったって言えるのは、
すごい親孝行な気もします。
月謝払ってくれてたんで」

――家族思いの話みたいな感じになってますが(笑)。

「あれ、何かおかしいな。
でも結局はそこかもしれない。
自分の満足度、自分に対しての悔しさっていうより、
申し訳なさみたいなのはかなりあったんで。
小っちゃい時、なんであんな事を言っちゃったんだろうみたいなことにしても」

――それ、ありますよねー。

「ある。それをここで出来ることによって克服できたりすると、
ちゃんとやってきた事が無駄じゃなかったぞって思えるし、
いろんな面においていい効果が出るんですよね。
例えば、能をやってたけど、
『能も出来ないでしょ?』って言われて、出来ないけど、
それで小っちゃい時からステージに立つという度胸はついてたんですよ。
一人でポーンと放り出されて、後ろに大人が座ってて、
演奏してくれる中で踊ってたわけで。
だから紅を引いてステージに出るっていうのは、
もう小さい頃に刷り込まれてるから。
それって、私が今アイドルをやる上でのルーツなんです」

――そうですよね。メイクして、衣装に着替えて、ステージに立つっていう事だから。

「そう。その日しか口紅は塗らないし、その日しか着物を着ないんだけど、
ステージに出た時の気迫の作り方とかは、そこから学んでます。
それがあって今がある、そう言えるといいなというのが今ありますね」

――でんぱもここまで来て、「それがあって今がある」状態になってますよね。

「基本的に親孝行だったりとか、
ある意味見栄っ張りなのかもしれないんですけど、
今、三重の観光大使させてもらって、
親嬉しいだろうなとか、やっぱ思っちゃうんですよね。
未鈴ちゃんも多分そう」

――みんなそうでしょ。
大体親の話をすると泣く子が多いって言うのは、
昔ひどい事を言っちゃたとかね、
親が一生懸命してくれたのに上手く出来なかったとか、
そういう申し訳なさがあるからだろうし。

「私は、モテたいとかでやる事って一個もないなって、最近すごい思うんですよ(一同笑)。
それよりも親が喜ぶのが一番嬉しいっていうのがあって。
1回だけ活動してる中で、親をバカにされた事があるんですよ。
妄撮をやった時。
こんなの許す親はどうのこうの言われたんですよね。
その時だけは、めちゃくちゃキレました。
それぐらい親のことは重要で、すね」

――今は、チャレンジし直せるくらい精神的に余裕があるということなんですよね?

「本当そうだと思う。
これは以前も言ったんですけど、
学校をやりたいという話があったじゃないですか。
それが今はどんどんカルチャーセンター寄りになってるんです。
やり直し施設みたいな(笑)。
それ、本当にやりたいですよね。
きっと楽しいと思う」

――学校って言い出すと大変だからね。

「本当にそう。
大学の講師をやらせてもらっていて楽しいんだけど、
やっぱり学校学校してるから、
カルチャーセンターぐらいでやりたいですよね」

――あなたのやり残した人生請け負います、みたいな感じですか?

「アハハハハ。早く場所を作りたいですね」

――それでどうなの? 克服した後。

「した後?」

――克服して、親にも内心恩返し出来た。
自分的にも今の自分の立ち位置も分かり、それで?

「やっぱり最初に言った、チェック付けていけるのって気持ちいいなって。
『済み』じゃないけど。
例えばこの先結婚とか、出産とか、女性としてやりたい事とかはいっぱいあるけど、
そうじゃない人間的なところで、性格矯正だったりとか(笑)。
私5年くらい前に1回やってるんですよ」

――性格矯正って何?

「結構荒療治で。
1回歪んだ時期を矯正したって言うか、
骨がめちゃくちゃ歪んでたんですよ、私。
多分気持ちの歪みで顔がめっちゃ歪んでたんです。
初めてメイドのブロマイド撮った時の事です。
それを2年ぐらいかけて戻したんですよ。
そしたらやっぱり健やかになったんです。
上京前ぐらいのテンションに」

――プレッシャーが大きかったんでしょうね。

「多分自分にすごい期待してたんじゃないですかね。
それを何とかフラットな状態に戻せたので。
そういう感じで一個一個矯正して『済』を付けていけば、
さらに大人になった時に、思ってた伸び伸びした感じに行ける気がする。
やっと人間的にすっきりしたというか、
憑き物を落とし始めて、この連載でもいろいろ整頓できたり、
毒をちゃんと薄めたりとか出来たおかげで、
だいぶいい状態になってる気がするんです」

――いろんな細かい事を含めて、成仏させてる感じはしますよね。

「本当にそう。
新しい物を抱え込むより、持ってた物を見直してる作業っていう感じです。
でも結構、最初持ってた物のセンスがいいんじゃないかって(一同笑)」

――おっとー、来ましたね(笑)。

「突然の天狗が(一同笑)。
最初持ってた物が何周か回って今欲しい物だったから、
昔の自分、信用できるなって」

――ねむちゃんって、昔すごい貪欲だったんだなと思いますよ。
習い事って、そんなにするんだと思うから。

「えっ?」

――アイドルさんて、いっぱい習い事してる人が多いですよね。
どうやって生活してるんだろうって思います。

「7つくらいやってましたよ、週に。
そろばん、習字、フラメンコ、お茶、能、ヴァイオリン、水泳」

――小学校の時に、そんなに詰め込むものなんですか?

「でも水泳も泳げなくて蟹さん歩きで終わったんです。
だから脱落してるんですよ。
習字は筆があんまり好きじゃなくて、ずっと鉛筆ばかりやってて。
あとピアノを1日だけ習ったんですけど、その日に辞めて帰りました。
鉛筆の持ち方を怒られたから。
私これじゃないと絵が描けないんで、
私がやりたいのはピアノじゃなく絵なんですとか言って、小1で辞めて(一同笑)。
超うざくないですか? 何て嫌な奴なんだって、今思うと。
それぐらい我は強かったですね」

――小さい頃にいろんな情報詰め込んでるから、
やり残した感もあるかもしれないけど、
今いろんな事が出来るようになって、克服も出来るようにもなってるから、
良かったじゃないですか。

「良かった良かった。
何となく嘘ついてる感じがモヤモヤしてたんです。
プロフィールとかで。
でもみんな結構そうだと思うんで」

――ところで今、趣味って何を書くの?

「今趣味、何だろう。職業は歌とダンス」

――アイドル?

「アイドル。本業がアイドル」

――ねむちゃん、多趣味だけどね。

「多趣味だけど、趣味?って聞かれると悩んじゃいますね」

――元々そういう人なんじゃないですか?

「なのかな、趣味って言うことでもないですね、みたいな感じで言っちゃう」

――大体趣味っていうのは、
小っちゃい頃に聞くと、これとこれって言うんですよ。
わりと小っちゃい子供の世界の物だなと思うんです。
大人に、「あなた趣味何ですか?」って聞いた時に、
即答できる人って少ない気がする。

「でも、大人の人にこそ、
『ご趣味は?』っていう文化があるじゃないですか。
『映画鑑賞です』みたいな。
趣味は美味しい物を食べる、ですかね。
美味しくない物、食べたくないしね。
やだわー。インタヴュー向きじゃない女になってしまってますけど」

――(笑)。

「多分私、媒体ですごい変えちゃうから。
さっきテレビガイドさんに喋ってた時は、
逆にヴァイオリンですって言っちゃった」

――そう言わなかったら、分からないよ(笑)。

「でしょ。キャッチ―だし。
で、それをやり直してるんですっていうのも1行で言ったんですよ。
その1行をここで何千文字にもしてるから。
本当はその気軽に言ってる1行は、何千文字の事なんだけど、
伝える媒体を選ぶっていうのは大事ですから(笑)」

――そりゃそうです。
でもいいじゃない、自分を見つめ直して、自分の中の何かを発見出来て。

「すごい冷静です、だから。
自分のペースが取れてるかもしれないです。
例えば締め切りが日々あったとして、
わー、締め切りとかなるけど、
何となく自分がこれぐらいで出来ることも分かってきた」

――大人だね(笑)。

「嫌ですね。嫌ですね」

――(笑)。いい意味で大人だよ。でもそれって。

「嫌ですね。本当に」

――でも自然とそうなってきますよね。
だからアイドルは、そうなってくるところを、
いかに直感でアイドルしてられるかだと思うんです。

「だから、最初から私が悲観してるのはそこじゃないですか(笑)。
アイドルになるために生まれてないのを分かった上で、
この連載も始めちゃってるから、
こんな話も出来るんですけどね」

――と言うねむちゃんは、
最近のアイドル状況をどう感じているんですか?

「私もうアイドル疲れました。
やる側としてじゃなくて、見る方に。
年々感じてますけど、変わり様が、私のついていけない方向に行ってて。
何となくみんなが、擦れてるのがおしゃれみたいになってるのがつらいです、見てて」

――その傾向は、でも主流ではないですよ。目立つだけで。

「でも結構見てて悲しいな、みたいな気持ちになる。
アイドルもファンもだし、何となく全体の感じとか、騒ぎ方とか。
これアイドルに関わらず、あらゆるニュースもなんですけど、
何となくSNSを閉じがちになってて。
見るとグッタリしちゃうんですね。
今は、本を読んで、紙に書いて、できるだけ選んで、汲み取ってくれる人にしか情報が見れない状態にしか自分の事を載せたくないと思ってるんです」

――言ってる感じは分かります。

「その手間とか手順を踏まない人には
真意を伝えたくないって言ったらひどい言い方に聞こえるかもしれないけど、
それがお互いにとって幸せだと思うんですよ」

――客観的に見てね。

「そうそうそう。
だから逆に私は今メディアが面白くって、
媒体によって変えるじゃないけど、
言ってる事は一本筋が通ってるけど、
本当はその一文に何千文字も詰まってるっていう事を、
例えばマーキーでは言うみたいなのとかの、選ぶ感覚を最近鋭くしてるんですね」

――でも、これだけSNSの扱いに関して、いい加減酷くなってくると、
事実酷い結果にもなってるわけで、
それを見てね、嫌だなって思ってる人も確実に増えたはずで。

「絶対そう思う」

――今のアイドルにしても、ヴィジョン無く短期的な活動は、
一瞬面白いけど飽きも早くて、やっぱ違うなって言う人はいる。
2~3年の波だし、多層化してますよ。

「結構何度も嫌だなっていう時期あったけど、今は深刻と言うか。
SNSに罪は無いし、
自分がそぎ落としてる状態だから余計思うのかもしれないんですけどね。
だからより分かりづらくしてるんですよ、今、自分の事を。
それを察してくれてるファンの子から、
最近ねむちゃんのツイートを読解するのが大変と言われたりしてるんですけど。
あやふやに書くんじゃなくて、
分かる人にしか分からない言い方というか、
何か鍵を持ってないと入れないみたいに、
本当に仕組み的な意味でそうしてますね。
実際の鍵じゃなくて。
何かはまるタイプの人達とか、
同じ要素を持ってる人に結果限定されていて。
そうすると、平等じゃないって批判もされるんですけど、
私その平等が本当に気持ち悪くて嫌なんですよ。
だって、そう言ってる人って、
本当に平等を理解してんのかなって」

――前提を理解せずして均等=平等と言うのは、むしろ差別ですからね。

「ですよね。だから、さも自分とかが正しいかのように、
平等とかを掲げてくる人達とかに、
怯える事なく不平等にしてます(一同笑)。
アイドルって平等が美学という空気があるけど、
それだったら会場に行ってる人と、
タダで映像で観てる人が同じ文句って言えないと私は思うから。
やっぱりそこで何か差がないと、私は足を運ばないし、
実際生で観れてるっていうところでの価値があるって自分で思うから、行くわけで。
そこでなんかそういうペッタンコな事を強要されるのが最近すごい嫌ですね。
それもあって、近く私の生誕があるんですが、
生誕にあたってブログじゃなくて、
コンビニで200円払うとウィーンて紙で出てくるっていう、
紙ログって言うんですけど、
そこにそういう事をちらっと書いたりとかしてて。
普通にツイッターでいいじゃんて事を、
あえて手書きの字でやれるのがいいなって思ってるんです。
今度からそれでずっと情報を発信したいです。
200円の紙をやり続けるっていう」

――全部は大変だけどね(笑)。

「大変だけど、思ったしょうもない事とかを、文通じゃないけど。
私ずっとファンの人とそういう感覚があって、
何となく私の事を気にかけてくれてる人が
生存確認とかで見てくれてる印象だったけど。
いつの間にか変な動物じゃないけど、
ていう風に見られてる感覚があるから、
普通に文通みたいな感じで、情報を発せたらいいなって思うんです。
ネットとか情報を上手く使うことも今までやってきたし、
もうやってる人がいっぱいいるからって違う事をやりたいわけでもなくて、
一人にやる事を、今、幸運にも求めてもらってるから、
たくさんの人にやれるけど、その手段を変えたいんですね」

――LINEもそうやって生まれてきたと思うんです。
真意を伝えるっていう所で、新しい手段が求められて。
それもまた飽和してくるわけで。

「すごい表現しづらいけど、
小っちゃい時に、自分の名前を絵本の会社に送ると、
絵本の主人公の名前が自分の名前になって、
刷ってこられる絵本があって。
私それがすごく好きだったんですよ。
みんなの物語だけど、自分の物じゃないですか。
私それが大好きで、ずっと読んでたんですよ。
ハンバーグを作る話なんですけど。
何々ちゃんて、お母さんが呼びかけてくれる名前が全部自分になってるっていう。
その体験から、もちろんこれが自分だけの物じゃないって分かってるけど、
自分が踏み込んだ事で、ちゃんと自分の物にできるし、
発信してる方もそのつもりで発信できるから、
何となくそのごっこがある上で、
ちゃんとやりとりが1対1でできるっていう仕組みが、
自分の体験の中ですごい好きで」

――それは原体験ですね。

「そうなんです。だからそれをやりたいんですよね。
ガチ恋じゃなくって、本当のリアルお手紙でもないんだけど、
自分が何かすることで、
私から何かが絶対届くみたいな事がやりたいなーっていう。
今は200円入れたら紙が出るとかの話だけど。
私は一人一人に本当は向き合いたいけど、できなくて。
そのSNSに対して、『そうじゃない!』みたいな事がすっごいあるから。
そこはできるだけお互い詰めていって、
本当に欲してくれてる人、でんぱの曲を聴いて泣いてくれてとか。
みんな平等に好きでいてくれてるんだけど、
この人には曲だけでいいかもしれないとか、
この人にはグッズまで届けた方がいいとか、
それぞれの処方量が違うと思うから、
そこで実際私の言葉を欲してくれる人に、
渡るといいなっていうことなんです。
フリーマガジンと違うところというか、
やたらめったら配らない愛情みたいなのをちゃんと対価でできるという。
情報をフェアトレードですね」

――なるほど。

「というのはすごい考えてます。
やり直しの話で言うと、
本当に必要な物は手の内にあったという話なんです。
大きくなるためにとか、
たくさんの人に伝える事が絶対大事な時期もあったし、支えてもらって、
そのおかげで、でんぱ組が大きくなっていったという感謝はあるんだけど、
ミニマムなこの事は考えていました。
でんぱ組.incの夢眠ねむを求める人と、
マーキーとか読んでくれて、中の人とコンタクトを取りたい人とを、
私は多分次の段階から、
もっとちゃんと分かりやすくするべきかなと今思ってます」

――やっぱり外に対して開いてる前提で、
クローズする部分を局部的に持つことは必要だと思うんです。
開けた媒体のときは一言、
「趣味ヴァイオリンです」がいいし、
その整理・調整がちゃんとついてきたんでしょうね。

「そう。ちゃんとメリハリ持って自分を見れるようになった感じはします」





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